鉄塔の怪人

山奥に聳え立つ鉄塔とかそこにいる気味悪い巨大カブトムシたちとか、誰にも知られずにずっとそこにいたっていう設定はなんとなく無理があるような気がしました。気味悪い・報復が怖いという地元住民たちの意見は最もだとしても。鉄塔王国をつくるのにそれなりの時間は必要だと思うのですが、警察に知られずにひっそりと計画実行するのって大変なことだと思うのです。

 トリックは比較的単純なものが多く、ちゃんと読んでいればわかるものが多かったのではないでしょうか。でも、トリックは単純でもなんとなく得体の知れない薄気味悪さみたいなものはありました。人間ほどもある巨大なカブトムシが薄暗い部屋の真ん中にどーんと置いてあったら、誰だって少しは驚きますよ。(虫嫌いの人なんかは特に)
 あと、この話推理的要素というよりも冒険的要素の方が多かったです。小林君の冒険。彼がどんな風に敵の根城に潜入し、攫われた子供を助けるのか。そして、明智小五郎はどのように敵と相対するのか。今回も例によるのですが、最後の二十面相の捨て台詞の「あばよ!」は清々しさを覚えます。

海底の魔術師

この話も推理的要素よりも冒険的要素の方が強いと思われます。けれど明智小五郎も二十面相にも劣らぬ変装をしたり、小林君もいつものようにリスのようなすばしっこさで敵を翻弄させたりして活躍しています。攫われた賢吉少年を助ける彼らの行動の早さは流石というべきかと思います。

 冒険的要素といえば、ここであげられるのは海底に沈没している船からの金塊探索でしょうか。邪魔してくる敵との海でのバトルもあったり。(潜水機同士であったり人と怪物であったり)暗い海の中での鉄の人魚の描写は薄気味悪いものがありました。
 本編の種は「鉄塔の怪人」と似たような感じだと思います。二十面相よりも明智小五郎の方が1枚上手だったということです。自分の変装は完璧だけれども他人の変装のことにはちょっと甘いですね彼は。この少し抜けているところがなんとなく憎めないのかもしれませんね。今回も最後はお縄につきましたが、また脱獄するんだろうなあ。

 なんというか二十面相は人を驚かすことに労力を注いでいるような気がします。巨大カブトムシに然り鉄の人魚に然り。語弊があるかもしれませんが、ただの愉快犯っぽくも思えます。これらにかける労力・時間・才能を別のところに活かせばいいのに。でもそれじゃあ二十面相じゃないんですよね。あと、前に彼は四十面相と名乗ったりしてましたが、本編では結局二十面相で通しているようです。(四十面相という呼び名も一応使われているといえば使われてましたけど)やっぱり二十面相の方が慣れてるからでしょうか。