ファンタジー小説。剣や魔法の世界とはちょっと違う、作者が生み出した独自の世界。時間の単位ももちろん違います。設定は割と在り来たりなのかもしれませんが、この童話物語の主人公は性格にやや難ありな女の子のペチカ。まあ色々な苦労があって、そんな意地の悪い性格になったのですが、そんなペチカがある日妖精のフィツと出会います。そして、物語・ペチカの旅は始まるわけです。

 親切にしてくれるのは、何か裏があるからだ。ペチカはいつもそう考えてしまいます。唯一の肉親である母親を早くに亡くし、絶望的ともいえる環境で育ったということもあるし、そういう考え方になってしまうのもわかるような気もします。というか、守頭がすごい怖いと思いました。追い回しすぎ、執念深すぎ。どこにだって現れる。あの人の存在があるだけで、ペチカに平穏は訪れないというか。せっかく幸福を手に入れたペチカの仕事先まで来ちゃうんだもんなあ。怖い。
 最後のところの天界の塔で守頭、ルージャンに襲い掛かったりしてますけど、あの人なんであんなところにいたんですかね。煙突とか高い建物登るルージャンでさえすごく苦労して登ってるのに、どうやって塔登ったんですかね。でも、そんな疑問も守頭だから、という理由で頷けてしまいます。
 この話のテーマとしてはたぶん、人は変われる、というものがあると思います。いつも世界を憎んでたペチカも旅をして、様々な人と接して、最後には今まで憎んできたものすべてを許すと決めた。散々ペチカを(たとえ苛めたくなんてないと思っていたとしても)苛めていたルージャンも彼女に「ごめん」と謝って、絶対守る、もう裏切らないと決めた。(そして、彼は違えなかった。自分が傷付いたとしても)(きっと物語のあとは彼が望んでいたようになれるんじゃないでしょうか)
 最初はどうしようもない子だなあと思って読んでて、なかなか読むペースも上がらなかったんですが、物語が進むにつれて、どんどん引き込まれていきました。人間って変われるんだなあ。ペチカの成長っぷりに感動さえしました。よかったね、って。
 時々よく解からない場面とか説明が足りないんじゃないかなあという場面もありましたが、楽しく読みました。すごく良かったと思います。ペチカとおばあさんのエピソードはほろりとするし、オルレアさんとハーティーさんのペチカに対する愛はとても温かい。そして、ヤヤさんの「誰だって、自分が思ってるよりはすごい人間だよ」という台詞はとても印象的に残ります。

 ページ数長いし、2段組なので読むには時間がかかるかもしれません。でも、一気に読みたい方はハードカバーがいいと思います。でも、文庫本(上巻,下巻)も出てるようなので、そっちの方が持ち運ぶにはやっぱり便利かな。