妖怪博士


 あいつはやっぱり生きていた! 執拗に少年探偵団の面面を狙い、復讐を果たそうとする妖怪博士。その妖怪博士のよく回る智慧(ずるがしこさ)に普段は勇気あふるる少年探偵団の皆も形無し。でも、やっぱり明智小五郎は違うんですよね。彼だけですよ、妖怪博士の正体をずばり最初から見破っていた人物は。(まあ、その犯行手段だとかその技術だとかで予想はついていましたが)あの人物と明智小五郎の戦いは化かし合いみたいなものなんですが、あの人物にも負けない智慧をもって、逆手をとっちゃうくらいですから。最後もやっぱり明智小五郎の勝利でしたしね。
 この話では少年探偵団の皆がピンチに陥ることが多く、読みながら「気をつけて!」と思ったりしたものですが、彼等の智慧もまた負けてはいないと思います。そういやデジャヴを感じたんですが、洞窟の中に入るのに迷わないように紐を使うというあれ、結構前にコナン(アニメのオリジナル?)だかで使われてましたよね。うろ覚えですが。

青銅の魔人


 犯人の風貌は今まで読んだ乱歩の「少年探偵団シリーズ」で一番不気味だったように思います。体中に懐中時計をくっつけ、まるで機械で動かしているような音を闇夜に響かせ、またあたかも機械人形のように振舞う。そんな姿を想像するとやっぱり不気味です。挿絵がほんと忠実だなと思いました。夜中あんなのには会いたくないです。でも、そんな不気味な怪人も人なわけで、そこにはちゃんと種があります。見破いたのはやっぱりあの明智小五郎です。
 でも、この話で活躍したのは明智小五郎もあるけれど、少年探偵団チンピラ別働隊でしょう。私は少年探偵団しか知らなくて、それとは別のグループがあるなんて知りませんでした。親がおらず、学校もいけなくて、だから夜も外を出歩けるそんな子供たちでメンバーは構成されてます。名前はちょっとあれですけど、頼りになる子たちです。現に襲われた小林くんや犯人逮捕のためにも動き回っていますし、俊敏性も高いようです。
 犯人にはそんなに驚きませんでしたが(やっぱりあいつでした。塩らしく捕まるなんて彼らしくないですからね)トリックの一貫の1つに驚きました。何年も前からこの計画をしていたのか、ただ切り札にするためか。手抜きがないなあと思いました。
 結局、最後に犯人は死んでしまったかのような終わりでしたが、あの人のことだからまだ生きてるんじゃないでしょうか。それで、また明智小五郎に挑戦状を叩きつけるんじゃないかな、なんて思います。
 
 このシリーズはその昔に少年誌に連載されていたものらしく、対象も子供としたもの。だからか、推理をするという楽しみがしっかりとあるように思います。不思議なことがあるとその旨が書かれていたり。ミステリ入門には良いのかもしれません。