少年探偵団シリーズの1つです。明智小五郎はもちろん活躍しますが、少年探偵団の活躍もやっぱり見逃せません。(それと、今回は明智探偵の奥さんの文代さんもいつもより登場します。まだ読んでないので知らなかったのですが、「吸血鬼」に登場するんだそうですね)「虎の牙」では、犯人は少年を誘拐しますが、ほんとに攫っただけで、食べるものも洋服もその少年にしっかりと施しをします。別段、盗みを働いたわけではありません。じゃあ犯人の目的はなんだったのか。その少年を誘拐することによって、小林少年をおびき出し、そして次は明智小五郎をおびき出そうという手口は一人の人物に行き着きます。
 今まで読んできた6つの話はどれもそうなのですが、どれも犯人はすぐわかります。面白いのはトリック。そして、化かし合い。万遍なくちりばめられている手品のようなそれに夢中になるのです。「透明怪人」でも、小林少年含む少年探偵団の証言やいろんな証拠をもとに行われる明智小五郎の推理の部分を読めば、結構そのトリックは単純なものだったりしますが、読んでるときはそのトリックの仕掛けがわからなくて、ほんと不思議に思ったものです。特に、透明人間にされてしまう、という件のところとか。思い込みにしてはよく出来ていたように思いますし。最初から、こいつが怪しい人物だっていうものはあったんですが、これといった決め手もありませんでしたし。(ラスト近くで漸くありましけど)
 この犯人のやってることって、解説にも似たようなことが書かれていましたが、もうただの意地からですよね。明智小五郎に一泡ふかせてやりたい、憎たらしい生意気な少年探偵団どもを怖がらせてやりたいみたいな感じ。だから、この犯人なんだか憎めないんだよなあ。素顔が気になります。あと、どれだけの特技があるのか、とか。